
青木良太という陶芸家がいる。まだ年齢は30歳。トレードマークなのか、頭にはターバンを巻いており、華奢な体は、お洒落な服に包まれている。一見、とても陶芸家には見えない。素晴らしい作品と本人のギャップに、多くの人が頭に疑問府を浮かべることだろう。どうして、この若さでこれほど質の高い器がつくれ、作家として活躍できるのか?しかし、彼の話に耳を傾ければ、その謎も氷塊する。
取材:鈴木隆文

青木さんは、作家になられてどのくらいになるのですか?
学校を出てからすぐになったんで、6年間位ではないでしょうか。
卒業してすぐ作家になれるというのは、ある意味では、かなりラッキーなことだと思うのですけど…。
そうですね。でも、学校にいる間から、2年間の勉強を終えたら、作家になるということは決めていましたからね。

でも、窯元というものは多くあって、いきなり作家になるというのは、簡単ではないことですよね。それに、青木さんは、元々は、別のことをやっていたと、聞きました。どのような経緯を辿って、陶芸の道に行き着いたのでしょう?
ええ、実は、僕は、愛知県豊橋市にある大学に通っていたんですね。非常に頭の悪い学校で(笑)、楽しい友達もいっぱいいて、毎日毎日すごい遊んでいた(笑)。で、あるとき、ふと「このままじゃちょっとまずいな」と思って、「まじめになろう、手に職をつけよう」と思ったわけです。
なるほど。目覚めたわけですね。
で、僕が一番好きなことがいいと思って、思い付いたのが、ファッション。それで、ブラザーミシンを買ってきて、服づくりをはじめたんです。で、1年位、ずっと部屋にこもってつくっていたら、委託で名古屋のあるお店に置いてもらえることになったんです。

えっ、はじめて1年で!服づくりって、そんなに簡単なものではないと思うんですが…。
でも、四六時中そればっかりやってましたからね。置いてくれるお店も段々増えていった。でも、今度は、お店側がいろいろと注文を出してくるようになって、それが面倒になってしまったんです。で、次に思い付いたのがアクセサリーだった。それで、つくってみたら、これがヒット商品にまでなってしまうんですね(笑)。
大学在学中の話ですよね?
はい。大学時代は、そうやって模索していたんですね。それで、大学4年生になったときに、カリスマ美容師ブームっていうのがあったんですよ。それで、僕、「これはモテそうだなあ」って思ったんです(笑)。不純な動機だったんですけど、「よしっ」と思って、美容室でアルバイトをはじめたわけです。で、卒業したら、ここに就職するんだろうなぁって、ぼんやり考えていた。

陶芸とは、かなり違う道ですね。
はい。で、あるとき、「まだ時間に余裕があるなぁ」って思って、陶芸教室にでも通ったら渋くて格好いいかなって、参加してみたんですね。そしたら、とにかく泥に触れる感触が心地よくて、しっくりきた。それで「これしかない!」って、衝撃的に思ってしまったんです。
そこでようやく陶芸家としての入り口に立ったわけですね?
はい。でも、その頃、家族からは、僕がコロコロ志を変えるので、「もう勝手にして、支援はできないから」って言われていましたし、その年齢から美大に行くという選択肢もなかった。で、いろいろ調べてみたら、いろいろなところに陶磁器の訓練校があることがわかった。それで、多治見市陶磁器意匠研究所に入って、2年間勉強することにしたんです。

その学校で、ようやく専門的に陶磁器の勉強をはじめたわけですね。
はい。でも、僕、勘違いしてたんです。入る前にも陶芸教室に2、3ヶ月通っていたから、「オレ、みんなに教えちゃうのかなぁ」くらいに思っていた(笑)。ところが、そこに集まってくる人たちは、どこどこ芸大で既に4年間陶芸の勉強をしてきた人たちばかりで、菊練りもできる、ロクロもできる、多くの知識もあるっていう具合に、当時の僕とは実力にもの凄い差があったんです。
(笑)それは、焦りますよね。
はい。だから、そこからは、もう陶芸だけの生活です。朝9時から夕方5時まで、学校にいて、夜は製陶所で働いて、夜9時半に仕事が終ったら、その場所のロクロを借りて、基礎的な練習を深夜12時か1時頃までする、という生活です。全然、遊びませんでしたね。友達が昼休みにサッカーをしているときでさえ、釉薬の研究をすることの方が大事でした。

服づくりのときといい、凄い集中力をお持ちなんですね。
でも、僕、この学校を出たら、「すぐに作家として食べていくんだ」って決めていましたからね。だから、もう陶芸ばっかり、メチャクチャやっていましたから。そしたら、1年経った頃には、「あっ、もう学校の仲間も先輩のことも抜いたな」って思えていたんです(笑)。
親の援助もなく、陶芸の作家を目指す過程では、心が折れてしまいそうになったこともあるのではないですか?
いや、それは全然ないです。とにかく貧乏で、コンビニでジュースすら買えない生活だったし、寝ていると天井からナメクジが落ちてくるような月2万円のじめじめした酷いアパートに住んでいましたけど、「絶対、作家になってやる」って強く思っていましたし、メチャクチャ陶芸が楽しかったんですよ。それに、ある先生に「陶芸と心中しろ」とアドバイスをもらっていて、「陶芸と心中する」って、心に誓っていましたから。


では、実際には、どうやって作家への道筋をつけたのでしょうか?
それで、2年目のうちに作品をいろいろなギャラリーに売り込みに行ったんです。そしたら、唯一、INAXギャラリーだけが、「まあ、はじめたばかりみたいだけど、いいんじゃない」って言ってくれて、それで、卒業後すぐに個展をやった。そしたら、初個展で、作品が完売してしまったんですね。それで、噂が広がって、徐々に個展をやらせてくれる場所が増えていったんです。
いきなり完売というのは凄いですね。でも、技術以外のセンスというものは、どうやって体得していったのでしょう?
それは、昔、ファッションが好きで、どうやって個性を出すかってことを一生懸命に考えていたこととか、現代建築を見てわまった経験が、陶芸の道でようやく活きたんだと思うんですね。だから、僕、自分の作風という意味では、在学中に既に確立されていて、そのままずっと今まで来ているんです。

なるほど、過去のいろいろな経験からインスピレーションを得ていると…。
でも、2年前位からは、土からもインスピレーションを受けるんです。危ない人だと思われると困るんですけど(笑)、本当なんです。原土を触ったときに、「あっ、こいつらのしたいようにすればいいんだ」ってことに気がついた。ロクロをまわしていて、ボーンって飛ばされたら、そのまま動いてあげる。素材がなりたい形になるのを手伝ってあげるような感覚ですね。日本料理みたいに、素材の味を引き出してあげるような感じです。
鋭い感性と凄まじい集中力。青木さんがどうして、その若さで素晴らしい作品をつくり、作家として活動できるのかが、よくわかりました。
これからは、日本の陶芸家として、もっと世界に出ていきたいと思っています。スイスに半年間、陶芸の留学に行ったときも、日本の陶芸のレベルの高さを感じた。でも、日本の陶芸は、まだまだ世界では知られていない。そこに挑戦していきたいなぁって、思っているんです。
青木良太の窯

青木良太
1978年、富山県生まれ。陶芸家。

お知らせ!! 「へうげもの展」
講談社「モーニング」に連載中の漫画「へうげもの」が、「器」の展示会を行います。若い陶芸家の手になる、よりすぐりの器が一堂に会す「へうげ十作」。今回、「PingMagMAKE」で取り上げた青木良太氏も出展します。興味のある方は、是非、足を運んでみてください。
会期:11月12日(水)〜25日(火)
場所:伊勢丹新宿本店5階「たち吉」にて。
6 コメント
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親愛なるPingMagMAKE読者の皆様
12月31日2008年
科学する心で伝統を見つめる:大辻朝日堂
12月16日2008年
ニッポン製Tシャツがゆく:久米繊維工業
12月9日2008年
日本人の大切な文化を伝えたい:喜久優
12月2日2008年
石を売る人:佐藤庭石店
11月25日2008年
桐箪笥の本質を守りながら:小倉タンス店
11月18日2008年
手づくり、天然素材とデザイン:ツルヤ商店
11月11日2008年
若き陶芸家に学ぶ、志の道:青木良太
11月4日2008年
将棋駒に宿る匠の技:天童佐藤敬商店
10月28日2008年
木工職人のお話:多田木工製作所
10月21日2008年









ほほほー。カッコイイね。伊勢丹行ってみましょうか
Posted by: domin @ 11月5日2008年
繊細で質量感のある美しいデザインですね。
魅力に惹かれ、伊勢丹で 内側が銀塗りのボール型の中型食器を購入しました。
とても気に入って購入したのですが、
2度デザート用に使用しただけで、銀泊がズルリと剥がれて全く使い物にならなくなりました。
食器としての必要最低限の条件を満たしていない器を購入したのは初めてです。
非常に残念であり、不愉快でありました。
Posted by: 結婚祝いに購入しました @ 4月29日2009年
青木さんの器本当に素敵ですね。
奥様の聖子さんの器も大好きです。
ご夫婦でこれからも頑張ってください!
Posted by: 青木ファン @ 10月2日2009年
青木君のwebsiteがオープンしています。
www.ryotaaoki.com
どの作品も、しんとした音と、
静かな緊張感があります。
Posted by: tree @ 10月20日2009年
今日の情熱大陸に出られますね。
楽しみです♪
2009.10.25(sun)TBS tv.23:00~
http://www.mbs.jp/jounetsu/2009/10_25.shtml
Posted by: mico @ 10月25日2009年
尊敬しました。
斬新な発想に・・
すばらしいです。
Posted by: ma-kun @ 10月30日2009年