山形県天童市は、木製家具で知られる町である。まわりの山々には、豊かな緑がしげり、大きな森が広がる。そこで伐られた木材を用いる地場産業なのだ。多田木工製作所は、いわば地域の生活を支えた大切な会社である。今回、PingMagMAKEでは、この会社を勤めあげた、ひとりの木工職人さんに話を聞いた。工場に勤める、職人さんにとっての、ものづくりって何なのだろう?
取材:鈴木隆文


工場を拝見して、一番驚いたのは、らせん状の家具だったんですけど、あんなに原始的な方法でつくっているというのは、想像外でした。

「スパイラル」の全体図はこんな感じ」
あれは、照明付きのコートハンガーで「スパイラル」という名前の商品なのですけど、一本一本を手曲げによる特殊加工をしてつくっているんです。使用しているのは、厚さ1.5センチ、長さ2.5メートルの4本の無垢のオーク材(なら材)です。出来上がった商品は、高さが約2メートルになります。
木材をあんな風に曲げることが可能なんですね。
最初、あのデザイン画を見たときには、正直な話、「こんな形のものができるはずがない」と僕らでさえも思っていました。それでも、2ヶ月間、試行錯誤をしてみたんですね。どうやって圧力をかけるのがいいのか。その結果、ナラ材を蒸し、圧力をかけて繊維を柔らかくしてから、円柱に巻き付けて固定するやり方を導き出したわけです。この技術を編み出したお陰で、今後、商品の幅も広がると思います。

こちらは、山形カロッツェリアプロジェクト(JAPANブランドの奥山清行さんと恊働で制作された商品ですよね。
はい。普通は、イラストの後には、コンピュータの画面上で3Dモデリングをしたり、設計図をつくるものなのですが、奥山さんの場合、そういう面倒なことが一切ない。彼から渡されたイメージを元に、手探りで、実際のモデルをプロトタイプとしてつくっていくんですよ。奥山さんの描くイメージ自体は線が強調されていますから、それを徐々に実物に近づけていく作業ですね。で、実際に出来たモデルから、データを取るという逆の作業なんです。
なるほど。それもまた原始的ですね。
そうなんです。早くレスポンスしていかなきゃならないわけですからね。スピードが要求された分、大変な製作だったんですけど、それにも関わらず、形になるまでの日数も短かったと思います。だから、実は、こうした原始的なやり方が、効率がいいんですよ。

それこそ、木のことを知り尽くしていないとできないことですよね。
まあ、私の場合は、若い頃から、ずっとここの会社にいたものですからね。この会社が、まだ、十何人しかいない時代です。もう、みんな、定年で辞めちゃったなあ。木工のことや、技術というのは、こちらに入社してから覚えたものなんです。
元々、そういう木工のものづくりにご興味があったんですか?
いや、特にそういうわけではないんですよ。ただ、祖父がいろいろなことを自分でやる人だった。石膏をするだけじゃなくて、鉄管を打ち込んで井戸を彫ったり。まあ、正式な商売ではなくても、お金もらって井戸掘り屋さんみたいなことをする人で、そういう血が、私にも流れているのかなって思うんですよ。実際やってみると、面白みっていうものも感じましたからね。


職人さんとして、木工のどんな点に面白みを感じるのでしょうか?
それは、何しろ、材料をどう使えるかっていう点でしょうね。木製家具の場合、木目がすべてです。木材を選ぶところからはじめて、どんな木目の材木が、一番合っているのかを考えなければいけません。会議室にあるような大きなテーブルでも、パッと見るだけでは、一枚の木材でつくっているように見えるかもしれませんが、実は、いくつかの木材をつなげてつくっているんです。そういう意味では、木の性質や木目をよく知るということは大事。今の若い人は、もう少し、その部分を勉強するといいかもしれない。
技の伝承という点では、どうなんでしょうか?
うーん。やっぱり、こればっかりは見て覚えてもらうしかないんです。ものづくりの学校に何年行ったって、実際に手を動かしてやらない限り、できるようにはならないです。聞いたことあると思いますが、「見て盗め」って、当たり前のことが、今は、当たり前ではなくなってきていて、「教えてくれないからできない」なんていうクレームもあると聞いています(笑)。勘所と言いますけど、それを探るのは、自らそれにアプローチしていく心、自分で工夫する心だと思うんです。ただ、受け身で教えられても、なかなか覚えないんですよ。当たり前のことなんですけどね。


伊藤さんの場合は、どんな想いで技能をあげてこられたのでしょうか?
私の場合は、人に負けたくないっていう想いが強かったですね。人よりも綺麗にとか、人よりも早くとか、そういう些細なことに喜びを感じてましたね(笑)。それぞれの人たちが、達成感というものを感じながら仕事をしないことには、きっと仕事がつまんなくなってしまう。だから、今日の勤務時間だけ仕事をしたらいいというのではなくて、自分ができることよりも、もう少しレベルの高いところに目標を置く。うまくいったときは達成感ありますよ、これは(笑)。
なるほど。基本中の基本の話でもあるんですが、確かに忘れてしまいがちです。それは、どんな仕事にも当てはまりますよね。
そうですね。それから、コミュニケーションの問題に関しても、そうです。元々、ウチは設計スタッフはオフィス、製作スタッフは工場という具合に、分けられていたんです。けれど、最近、改革をして、実際に作業をする工場の中に設計を置いたんですね。「自分が引いた図面が、どうやってつくられるかを見るように」ということなんですけどね。ものづくりの場合、メールで資料だとかデータをやり取りするよりも、直接、対面してやり取りした方が、はるかに効率がいいんです。それに問題意識を共有できるところがいいんですよ。昔はそうしてたから、いわば、先祖帰りみたいなものです。


最後になりましたが、ここの創業者は、どんな方だったのでしょう?
元々、多田木工の創業者は、大変な苦労をされた方でしたからね。戦争で、満州に行って生き延びて命からがら帰ってきて、「さあ、何をして食べていこう」って。それで、天童木工さんのところで、10年間ほど修行して、それから実家の農作業小屋で細々と創業(昭和31年)したんですから(笑)。経営者になった後も、自分自身が職人でしたから、厳しかったですよ。工場には、もう毎日、顔を出して、「ここはこうじゃない。ここはこうだ」って。それこそ、顔と顔を合わせた対面のコミュニケーションですね。だから、当初、500坪だった工場の会社が、今の11,000坪にまでなったんでしょうね。それだけ、ものづくりの心があったんだと思います。
多田木工製作所
山形県天童市一日町4-2-3

伊藤繁夫
1945年、山形県天童市生まれ。木工職人。

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本当に有難うございました。3日にお会い出来るのを楽しみにしており
Posted by: Swing lyrics @ 5月15日2011年
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