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家を建てる植木屋さん:インターパーツ

9月16日2008年 カテゴリー: 国内, 建築, 自然

家を建てる植木屋さん:インターパーツ

インターパーツという不思議な植木屋が、神奈川県の戸塚にある。一見、植物や植木鉢を売るお店でありつつも、庭もデザインし、家まで建ててしまう。ここでは、「気持ち良い」ということを軸に、日本の風土、気候、環境を考慮に入れながら、生活、そして景色をつくっている。インターパーツはinternal partsの略で、人も植物も内側から気持ち良くなるパーツの意だ。選りすぐられたパーツは、最終的にはハーモニーを奏で景色へと溶け込んでいく。自らを植木屋、そしてランドスケープデザイナーと呼ぶ、 同店店主・野口薫に彼の想いを聞いた。

取材:鈴木隆文
協力:平本哲也

店内には植物と植木鉢がズラリ並ぶ。ほとんどの鉢のデザインは、野口氏が考案したものだ。

インターパーツは、植木や植木鉢を売ったり、その他デザインもされたり、さらに驚くことには家も建てたりしていますよね。

このお店は、全てのパーツは現場から生まれるという考えを元にやっているんです。全体の景観、ランドスケープを考慮して、植木屋の立場から現場に必要なパーツ、ちゃんとした職人がつくったパーツを集めると、そこに相互作用が起こり、気持ち良さが生まれる。机の上でモノを考えるデザイナーや建築家だとそれを間違えてしまう。それと同じ考えに基づいて、日本ならではのフォルムを意識した上で、植物に合うスタイルの植木鉢をつくってもいるんですね。火鉢に使っていた型を使って植木鉢をつくったり、盆栽鉢を白磁でつくったりね。

植物や造園に関しての勉強は、どこかで習われたのですか?

いや、植木屋さんの敬愛する師匠はいましたが、基本的には遊行です(笑)。遊んで汚れたり、擦り傷をつくって学んだことなんですよ。父親も土いじり、植物が大好きな人間でしたからね。まっすぐじゃなかったり、アットランダムだったりする自然の気持ち良さは、体で覚えた。デザイナーや建築家というのは、すぐに「自然を大切にしよう!」なんて言い出すけど、植物の感覚なんてわからないから、等間隔に木を植える。不自然なんですよ。もし、木漏れ陽を気にして植えたら、ああはならない。後は、カリフォルニアのシーランチに受けた影響は大きいね。

野口氏の手による庭のデザインの数々。「和」を感じさせながらも、日常の住まいやすさ、機能面にも目配りが行き届いている

シーランチ? それは一体どんなものでしょうか?

景観や風土を第一に考え、出来るだけ自然をいじらない。そういう中で、人がどう気持ちよく生きられるかという、カリフォルニアで行われた壮大な実験ですよね。どういう風が吹き、どういった波が寄せるか、などの気候や風土を考慮して家を建ててるね。造園、土地と建築を切り離さないで考えられた実験ですね。調べてみると面白いですよ。

※シーランチの詳しい説明はこちら

そのシーランチの影響で野口さんも家を建てるんですね。でも、どうして植木屋さんが家を建てられるのか不思議です…。

僕は、日本大学の芸術学部美術学科で造形デザインを習っていました。でも、大学にはあまり感動できるものがなくて、美術家かデザイナーになる志もなかった。でも、個人的に僕のことを可愛がってくれる建築家やデザイナーなどと知り合いでしたから、影響を受けながら独学で学ばせてもらったんです。で、その他に、必要なことや興味のあることは本や実地で勉強して学んだことが多いね。

インターパーツが手掛けた住宅。日本の民家風でありながらも、さりげない粋さのある独特の表情を浮かべる。もちろん庭のデザインも。

野口さんが家を建てるときは、どのように関わるのでしょう?

土地探しから頼まれることもあります。土地が決まっている場合は地域のランドスケープを軸に、最初に、予算に合わせてスケッチを描く。そこから建材や使う材料も決める。庭から考えて家を建てるわけです。駐車場をどこにするか、木をどこに植えるか、ゴミを出すときはどうするか、水道や電気などのライフラインに問題はないか、等。そうやって、湘南なら湘南、鵠沼なら鵠沼という具合に土地と生活に根差して、機能していく家を考える。細かい設計図や構造計算なんかは、建築士に依頼しています。

シーランチの考え方を日本の地でやられているわけですね。

そうです。やっぱり1973年から、僕はアメリカに行って、なんでアメリカでできて日本でできないのかな、って思いましたからね。でも、僕は、アメリカやハワイには7年間いたけど、アメリカ人になりたかったわけじゃない。埼玉だろうが千葉だろうが九州だろうが鎌倉だろうが、場所はどこであれ誇りを持って自分が育ったハートランドを大事にしながら、気持ちいい環境が出来ないかと思っていますからね。高級なものでなくていいから、土から生えてきたような家をつくりたい、そう思ってやってきました。自分ではBランチと言っています(笑)。

光が溢れていながら、気持ちの良い広々とした空間となっている玄関。昔の日本家屋にあった土間を想い起こさせる

でも、70年代にアメリカに行くというのは、時代的には難しかったのでしょうね。

それをさせてくれたのはウチの親父ですよね。若いうちにいろいろ体験した方がいいと言って、アメリカに行かせてくれた。父とは、途中、喧嘩をして長いこと口を聞かなかったこともあったんですけど、父も庭いじりが好きでしたから、植物の話になると、お互い気持ちが楽になりましたね。

帰ってきてからの拠点は、ずっと戸塚なのですか?

79年に戸塚のお店を始めて、庭のデザイン、植物のコーディネートやリース等をしていたのですが、85年から93年の間は、神宮前にもこのお店、インターパーツを出していたことがありました。そこでは、結構商品が売れて、会社も大きくなっていったんですけど、社長業に向いてなくて、やめっちゃったんだよ。

インターパーツが手掛けた住宅の内部。シンプルながら、清々しい生活に馴染む空間が広がる

えっ!売れたのにお店を閉めるというのは、すごい選択ですね。

会社を運営するための仕事が増えて、ストレスで痩せてしまってね。苦労がいい方向にいかなくなるんだよな。それに、ランドスケープデザインの仕事に少しずつ自信を持てるようになっていて、その仕事に集中したかった。

でも、ひとつ疑問なのは、どうやって「家を建ててください」という注文が来るのでしょうか?

多くの場合は、口コミで人を介してきますね。このお店も、79年に自分でデザインして建てたんですよ。お金がなかったから、古い家を職人さんと一緒になって改装してつくったの。でも、当時の日本では、認められなかった。それでも、中には分かってくれる人もいて、「野口ならいいものをやってくれそうだ」って、依頼してくれるんです。建築家なんかも僕のところに依頼に来るんだ。「お前の方がこういうのは上手いだろ」って(笑)。だから、一番大事にしてるのはランドスケープ。そこから、建物、植物、パーツ、という風にバランスをとる。家を建てるというのは、その流れの中のひとつなんです。

では、最後に今後のビジョンなどありましたら教えてください。

自分がこういう商売を続けるには、自分自身が毎日気持ち良くないとね。リアリティの中にある気持ち良さ、そういうものをパッケージしていきたい。この国の景色とか風土があって、そこにどういう人が住んで、どう幸せになって、どう暮らしてもらえるかっていうのを考えていきながらね。それで、その気持ちいいっていうことを、少しでも若者たちに伝えて、バトンタッチできたらな、と思っていますよ。最近は、尊敬できる若い人たちも増えている。彼らと話していると、同世代の人間と違って、考えていることが想像つかないから面白いよね。

店内には野口氏が信頼の置ける職人さんらと手掛けた植木鉢などが、販売されている

INTERPARTS
横浜市戸塚区吉田町944

野口薫
1950年生まれ。インターパーツ代表。植木屋。ランドスケイプデザイナー。

2 コメント

  1. 11

    Posted by: 匿名 @ 11月9日2008年

  2. Very Nice! makes me remind the coloured performance of the early pink floyd!

    Posted by: christian louboutin @ 11月10日2011年

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