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山に響くコケシのブルース:松田工房

7月29日2008年 カテゴリー: 伝統, 国内, 工芸

山に響くコケシのブルース:松田工房

江戸時代の東北地方で生まれたコケシという郷土玩具。頭があって胴体があるという、極めてシンプルな造形ながら、産地毎の絵付けに大きな特徴があり、日本各地にコケシ・マニアを生んだ、コケシ・ブームと呼ばれる時代もあった。最先端の玩具に子供たちが目を奪われる今の状況においても、黙々と木を削り続ける工人は胸にどんな想いを秘めているのか?

取材:鈴木隆文

今の人たちには馴染みが薄いと思いますので、まずはコケシ事情についてお聞かせください。

いやあ、どうなんですかね。昔みたいにバンバン売れたりとか、そういうことはなくなりましたね。昭和40年代にはコケシブームっていうのがあったんですけどね。元々、コケシというのは、お椀、お盆、仏器という生活用品をつくっていた木地師が片手間でつくっていたものなんですよ。起源を辿ると、江戸時代まで溯るらしいんですけどね。あんまり文献は残されていないです。その頃は、玩具なんていうのは、なかったから、そこらで遊ぶ子供たちのために玩具をつくってあげたんでしょうね。

東北の温泉地が産地になっているケースが多いように思うのですが、温泉とは何か関連があるのでしょうか?

まずコケシは東北だけの文化ですね。出来上がったコケシを、温泉に湯治に来た旅人にお土産物として売っていたんですよ。ウチの祖父や父の時代は、売れて売れて忙しかったみたいですよ。

さまざまな工具を使いわける

コケシをコケシたらしむる赤と緑の塗料

というと、今はあまり景気が良くないのでしょうか?

そうだね。今は、昔とは違って、なかなか難しいね。だから、私の場合は、少しは新しいアイディアでやったらいいんじゃないかと思って、コケシの技術を使って、タイガースのダルマをつくってみたり、ひな人形をつくってみたり、鯉のぼりをつくってみたりしているけどね。それに、ウチにいる若い職人たちにもアイディアを出してもらってね。

職人さんは何名雇われていらっしゃるのですか?

若いのを2人雇っていますね。28歳位だけど、もう10年位やっているから、上手ですよ。だから、彼らにもアイディアを出してもらって、楽しみながらやってますよ。楽しみながらやらないとつまらないんじゃしょうがないから…。

電動ロクロを用いて、力を入れつつ、角度を調整しつつ

コケシ工人には絵心だって必要なのだ

コケシはなかなか厳しい状態のようですけど、後継者問題については、どう考えていらっしゃいますか?

本当は、息子に継いでもらいたいと思っていますよ。でも、今、息子は東京の大学の方に出てしまっていますからね。彼は三人兄妹の長男なんです。姉がふたりいて、三番目が彼でね。

息子さんはコケシ職人になる意思はあるのでしょうか?

それが分からないんですよ。実は、東京の大学で息子が学んでいるのは少し特殊なことでしてね。ピアノを学んでいるんです。ウチは兄妹三人全員にピアノを習わせたんですけど、どうしてか息子が一番ピアノを好きになってね。この辺じゃ、人並みよりは上手く弾けるってことで、音楽大学に行かせてやることにしたんだけど、まあ、東京というところは、全国から飛んでもない優秀な人たちが集まってくる場所だからね。そういうところで現実を知るってことだけでも、いいんじゃないかな。何よりも自分の好きなことを通しての友達もできるだろうしね。

こけしの表情は一体一体違うからこそ面白い。その上、産地毎に大きく特徴が異なるのだ!

長男が家を継ぐという慣習は、もうこの辺りにも残っていないのでしょうか?

どうなんだろうね。少なくともウチでは、無理矢理、継がせようとは思っていないですね。まあ、私のときは、親の仕事を継ぐのは当たり前だから継いだけど。今はねぇ、そういう時代じゃないから。鳴子は東北地方じゃ、一番コケシを売ったところなんですよ。コケシ工人もある時期には50、60人いたからね。たけど、今は、約半分の30人位じゃないかな。

松田さんご自身は、子供の頃から、コケシ工人になるつもりでいたのですか?

まあ、いつか継ぐもんだとは思ってましたね。でも、私も、東京の方に出て、数年間、デザインの勉強をしていたことがあるんですよ。レタリングっていう技術をある美術の先生に教えてもらって面白いなあと思って、その後で、横尾忠則さんや福田繁雄さんのデザインが大好きになって、憧れるようになったの。でも、東京出てみたら、そのレベルっていうのが、全然違うんですよね。「あー、これで飯を食べていくってことは大変なことだなぁ」って思い知らされましたからね。でも、そうやって、自分の好きなことをさせてもらって、デザインを通じて友達もできて、本当に良かったと思っているんですよ。だから、息子にも同じように好きなことを好きにやってもらって、最終的にピアノで飯なんか食っていけっこないんだから、自分で道を決めたらいいと思うんですよ。コケシやるんならやるで、新しいアイディアを考えてね。

では、松田さんは、コケシづくりの技術はお父様から学ばれたんでしょうか?

いやあ、ウチの親父は難しい人間だったから。口はほとんど聞かないような。だから、親父にはつくり方聞くのも嫌だったね(苦笑)。それより、おじいさんの方に、いろいろ聞きましたね。何をつくるにも器用で上手だったですし、聞きやすかったですからね。でも、こういう山の中に、お店を構えて、つくったコケシをそこで売ろうって考えたのは親父ですからね。「これからは車の時代だ!」っていうんで、駐車場つくってね。それは、それで尊敬してます。

お話を聞いていると、コケシの現状の厳しさをひしひしと感じるのですが、そんな状況の中で、松田さんが仕事に喜びを感じるのは、どんなときでしょうか?

コケシづくりというのは、技術は必要ですが、単純で単調な仕事なんです。だからこそ、大変といいますかね。毎日毎日コケシづくりを続けていく中で、どう喜びを見つけていけるか。それを考えなきゃいけません。どうせやるなら楽しくやらないとね。だから、そういう意味でも新しいアイディアを出さなければならないんです。それでコケシを買ってくれたお客さんが、「あー、良かったね」って言って、また、戻ってきてくれたら、それより嬉しいことはないですね。

では、最後にコケシについて、世間に問いかけたいメッセージというのはありますか?

いやあ、特別そんなのはないね。ただ、コケシの技術を次の世代に残していきたいって、そう思ってはいるんだけどね。

松田工房
宮城県玉造郡鳴子町字上鳴子126-10

松田忠雄
松田工房三代目オーナー、コケシ工人

8 コメント

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    Posted by: air multiplier @ 4月20日2012年

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    Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年

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    Posted by: bladeless fan @ 4月21日2012年

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