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鋼鉄の落とし子:EXIT METAL WORK SUPPLY

6月17日2008年 カテゴリー: ビジネス, 意匠, 製品

鋼鉄の落とし子:EXIT METAL WORK SUPPLY

鉄工所という言葉の響きとは、かけ離れたクールでスタイリッシュなプロダクトをつくる工場がある。EXIT METAL WORK SUPPLYは、自らデザインし、そして製造する鉄工所である。つくっているものは、主に、鉄製のハンガースタンドなど、ディスプレー用の什器。同鉄工所の長は、先週の俵藤氏に引き続き現代手工業乃党のメンバーであり、発起人となった人物でもある。ものづくりの最先端を見据える彼が、製造業にあてようとしている新しい光とは?

取材:鈴木隆文、鳥越寛子

まずは、清水さんが発起人となった現代手工業乃党を起ち上げた理由を教えてください。

クライアントとの打ち合せなんかの場面で「君はデザインした人?つくった人?」って聞かれることってすごく多いんです。で、「両方です」って言うと、「そんなわけねぇだろ」という反応が返ってくる。でも、ものづくりもして、デザインもしている人は僕のまわりには何人もいた。そういう人が結束して主張すれば、もっと理解してもらえて、仕事もしやすくなるんじゃないか、そう思ったわけです。

具体的にはどういう活動をしているんですか?

主には、「年に一回、展示会を開く。webサイトを通じて、情報を常に発信していく」というふたつです。




工場内の様子


スタジオの様子

党として、サイトで情報発信していくようになって、変わったことはありましたか?

はい。僕の場合は、コンペがなくなって指名で仕事が来るようになりましたね。相談されて、見積もりが合わなければ、格好良さを変えずに別提案を聞いてもらえる。単に安い見積もりだけを求められたり、見当違いのものを望まれなくなりました。

党のメンバー間の横のつながりでも情報がシェアできるのではないですか?

もう、僕らの連携ぶりは、バンド状態ですよ(笑)。愛知県で鉄やっているメンバーが、変わりに神奈川県で鉄やってるメンバーに代理で仕事をふって、電話でイメージだけ伝えて、デザインしてもらってモノまでつくってもらう。これ、別会社を営むふたりの間での協力のお話ですからね。それは、もう奇跡的(笑)。お互いのバックボーンをよく知っているからこそできるコミュニケーションです。お互いに自分の専門以外の仕事を発注し合うのも、日常的にありますね。

EXIT METAL WORK SUPPLYのメンバーたち

ところで、清水さんは、ご自分の会社も今のような明確な方向性を持って起ち上げられたのですか?

独立したのは、今から12年前のことですが、当時は漠然と「オシャレな鉄工所をやりたい」というイメージだけでした。ただ、会社を起こすときについてきてくれた後輩達が若くてガッツがあったし、予想外にデザインの才能があったんです(笑)。そのお陰で、まず自社のデザインありきで、それから製作の仕事が発注するという製造業としては、珍しい流れができたんです。その後、より良いデザインとものづくりを求めるクライアントさん達との出会いがあって、彼らとの仕事を通じて、デザインとものづくりの質を鍛えてもらった感じです。良いデザインには「力」があります。だから、ウチは基本的には鉄工所であっても、デザインという行為をとても大切にしているんです。

でも、たとえオシャレでも、鉄工所をやろうと思う若者って、多くはないですよね?

僕には、鉄工所以外のことが思いつかなかったんですよ(笑)。僕は出身が下町の向島ということもあって、中学生時代から、金型に穴を開ける仕事をしていて、「オレは、将来、間違いなくこれで食っていく」、そう確信してましたから(笑)。


パターンを描く

鉄を曲げる

曲げられた鉄の部品

つなげると美しい模様に

じゃあ、学校を出た後は、鉄工所のことしか頭になかったわけですか?

そうですね。高校卒業して、プー太郎を2、3年していて、その後、イデーという家具屋でカッコイイ鉄の家具を見つけて、「これつくっている鉄工所を教えてほしい」って、お願いをするわけです。ところが、訪ねてみると、その鉄工所は折からの不景気の波を受けていて、採用はしていなかった。で、枠に空きが出るのを待っている間に、イデーにワークショップ(開発部)ができて、縁ということで入れてもらえました。最初は、倉庫でしたけど。

自分でデザインもするようになったのは、イデーでの経験があったからでしょうか?

イデーもそうですが、そこに出入りしていた超天才イギリス人デザイナー、ガイ・ダイアスの影響です。彼は、RCA(ロイヤルカレッジ・オブ・アート)の2部門を首席で卒業して、元はソニーのインダストリアルデザイナーで、今は映画関係の美術をデザインしている人物です。その彼が、当時、イデーでデザインをすることになって、その時、彼がデザインしたものを手を動かしてつくる担当が僕だったんです。




ディテールが見事!

さりげなく美しい曲線

じゃあ、彼と一緒に仕事をしたわけですね。

はい。彼のデザインへの執着心って凄いんですよ。毎日深夜2時頃まで、「そうじゃない、こうだ」って、僕の横について、ずーっと見てる(笑)。それで、プロジェクトが終わった後に、「清水、お前も自分でデザインしろ。絶対に通じるから」って言われて。その頃、モデラーとして、カリム・ラシッドとかマイケル・ヤングとか世界的デザイナーの仕事はしていたし「デザインしてみたいなあ」とはよく思っていましたけど、萎縮してしまってましたね。でも、その超天才からの言葉で「よし、やろう」って、はじめるキッカケができたわけです。

なるほど、流れに乗ったわけですね。

あんまり深く考えてない(笑)。シンプル。僕には、駅前でギター弾くロックミュージシャンの友人がいたんですけど、彼に仕事の相談をしていたときに、いい言葉をもらったことがあるんです。「何、清水っちゃんの仕事って、そんなに面倒なんだ。俺なんか、格好いいギター弾けば人集まるし、曲が良ければCD売れるよ。オレの場合、それだけで松戸の駅前から武道館まで、頭の中ではバッチリつながっているけどね」って。

お店(クワドロフェニア 大阪・阪急梅田)にクールに設えられたEXITのハンガー。インテリアデザイン:佐々木一也(スモールクローン)、メタルワーク:EXIT METAL WORK SUPPLY、写真:高山幸三(タンク)

格好いいこと言いますね。

その言葉聞いて、「ああ、俺は今まで一体何で勝負しようとしていたんだろう。”どこどこの誰かさんと知り合いです!”とか、そんな実力以外のハッタリみたいなもので仕事もらおうとしていたのかな」って。「一個一個格好いいものつくって、売れれば、次もあるだろう!」っていう潔さは、彼から学んだと思っています。だから、今のスタッフたちにも、言うんです。「格好いいものをデザインしてつくれよ。”これ、どうですか?”って、俺(社長)の好き嫌いを聞くな。ブティックの人に買ってくれるかどうか、片っ端から聞いてみなよ。それで売れたらいいね」って。僕ら、個人商店ですから、自己責任で、潔くやっていきたいですね。

なるほどシンプルですね。

僕は、ものづくりを格好よくて、面白くて、クリエイティブなものにしたい。音楽とかITとか金融とかの分野は、成功したら、何かいいことありそうですよね? だけど、3Kと言われる製造業だって、それはできる。だから、まずはファッションとか音楽とか、そういうわかりやすい言語も使って、いろんな人を巻き込んでいけたらなぁ、と思っているんです。

EXIT METAL WORK SUPPLY
東京都港区芝3-6-5

清水薫
1970年、東京都生まれ。鉄工職人、デザイナー。
EXIT METAL WORK SUPPLY代表。現代手工業乃党・創設者。

1 コメント

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