
真円や表面のキメ細やかさなど、日本の真珠は高い品質を世界に誇ってきた。しかし、近年、貝の大量死問題、外国産真珠の進出で、一時の勢いは失われている。そんな中、新たな技術開発、商品開発になおも挑みつづける真珠屋、松本真珠は、愛媛県の宇和島という地にある。真珠養殖の盛んなこの地で、ひとりの男の情熱を支えるものとは?
取材:鈴木隆文


宇和島には真珠屋さんが沢山ありますね。松本真珠の創業はいつになるんでしょう?
この会社がはじまったのは、だいたい40年ほど前のことやな。親父が創業して、途中で、僕の兄貴がしよった。
真珠屋さんが宇和島に多いのはどうしてなんですか?
宇和島は、山が高いでしょ? そうすると、海は深くなる。海が深いということは、四季の寒暖が厳しくなって、良い真珠がつくれるんよ。前は700件くらいの真珠屋があったかな。でも、それが今は、200件前後になっている。外国産とアコヤ貝の大量死問題にやられているからな。


松本さんは、ずっと真珠業界なんですか?
そうやね。僕は免許がなくて、養殖ができなかった。それならと、真珠の加工販売の会社をやっとったんです。その頃は、養殖屋は、親父と兄貴が担当してた。当時は、今と違って、つくれば売れるという時代なんよ。だから、密殖するヤツがおった。そうすると、国も一軒にひとり分の(真珠養殖の)免許しかおろさんかったんよ。
今は引き継いで、養殖、加工、卸し、販売の全部をやっているんですか?
ええ。兄貴が急逝して、しばらくは親戚がやりよったけど、素人やったから上手くいかなくて、僕が継いだんです。最初は、両方を自分ができるか不安だったんやけど、養殖、加工、卸しを一貫してやると、お客さんにウソをつかなくていいんよ。一貫してやってる真珠屋は、日本でも数えるくらいしかないんですよ。


一貫して、つくることと売ることをやっているのは、品質にこだわるからですか?
そうやね。周りの人は、「この養殖の悪いときに、お前何を考えてんのや。できたもの買って、それを加工して売ったらいいやないか」って言いますよ。でも、品質の良さを追求すると、養殖と加工とは一緒に繋がってあった方がいい。こんなことは、馬鹿じゃないとできんですよ(笑)。でも、お客さんは僕らを騙しません、いつも騙すのは売る方なんですよ。だから、顔のわかる人が自分でつくったものを自分で売るというのが、僕は絶対に正解やないかと思っとるんです。
真珠づくりに情熱を持ってやられているんですね
真珠というのは、愛着を持って丹精込めてやらんとできんですよ。貝との対話ですから。核(珠)入れるのもメス入れるのも、一発勝負やから。養殖場というのは、サラリーマンの考えじゃできんと思う。家族でやらんと、本当にいいものはできない。相手が生き物ですからね。大手術ですよね、バレーボールのようなものをポコンと入れて、貝の中に宿らすわけやから。簡単やないですよ。朝も早いし、夜も遅いですから。うちも息子が、珠入れはじめましたけど、まだまだやね。

家族みんなで真珠屋をやられているのですか?
ウチは、4人の兄妹がおって6人家族やけど、なんやかんやと戻ってきてくれているな。長女は東京で販売や広報をやって、次女は東京から戻ってきて卸しと販売を手伝ってくれとる。ふたりの息子のうち、お兄ちゃんの方は戻ってきてくれているし、今、学生をしている弟の方も、卒業したら戻って手伝ってくれるみたいですね。それに、ウチは奥さんも珠入れをしよるんよ。
一度家を出た子供たちが揃って家業を手伝いに戻るというのは、珍しいですね。松本一家は、お父さんやお兄さんも真珠の仕事をしてたわけですから、本当に家族ぐるみですね
そうやね。兄貴と言えば、一度、ベトナムで養殖やるのがいいんやないか、と言い出したことがあってね。で、最終的に申請までして、本当に行こうかというときに、僕の父はこう言ったんです、「行くんなら家族全員行こうじゃないか。その代わり、行く以上は、ベトナムが里ぞ。日本の土地も全部売って、墓も持っていこう。そこまでやる気があるんならやろうやないか」と。


お父さん、格好いいことを言いますね
「やるんだったら腹を括って、戻ってくる所をなくして、覚悟を持ってやれ!」ということを言いたかったんやろうね。それ言われて、ベトナムへは行かなかったんです。でも、そんな父も業者に騙されたりしてましたけどね。スプレー塗れば、貝が汚れないで、巻きのいい(大きい)真珠ができるからとか言われて。僕、子供やったけど、みんなでスプレー塗ったの覚えとるもん。でも貝殻でも呼吸しよるんです。それで、養殖していた貝が全滅しよったから(笑)。
子供の頃から手伝いをされていたんですね。
その頃は、誰もが普通に手伝いよったんやないですか。昔は、そういうのが楽しみだったりしたから。僕のところには、自分の子供のように、他界した兄貴の子供がおるけど、彼女らも手伝いよるよ。やっぱり、真珠は家族ぐるみやないと難しいから。


ところで、真珠という商品にも、研究開発というものは、あるんでしょうか?
ウチは毎日が挑戦、毎日が研究ということで、表面の独特なきめ細かさや巻きの厚さ、いかに商品になるものを高い確率でつくれるか等、何年もやってきてます。それに新商品の開発もあるんですよ。もう少ししたら、今まで見たことがなかった真珠を発表します。でも、真珠の場合、自然の力を借りないといけないし、珠を入れて、結果が出るのは、一年後ですからね。
松本真珠の商品の中でもユニークな、ナチュラルホワイトパールも研究開発の賜物なんでしょうか?
そうやね、あれは調色の工程をなくして、より透明感が強調された商品なんです。僕は、小さくてもいいから、こだわったブランドをつくって行きたいと思っとる。量とか売上げやなくして、名前を聞いたら、誰もが「あっこねー」「ああ、日本の宇和島っていうところにある真珠のブランドねー」「こだわったものづくりしとるよねー」という。だから質にこだわっていきたいんよね。
松本真珠
愛媛県宇和島市佐伯町1-1-4

松本愼二
松本真珠代表取締役。

4 コメント
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はじめまして。
記事、とても興味深く読ませていただきました。
海が汚れて、真珠がとれにくくなったと、
知人から聞いていたのですが、努力されて
がんばっている人がいらっしゃるのだと知り、
愛媛出身としては、安心しました。
趣味でしておりますが、
元気な街になるように、宇和島を舞台としたシナリオを書きたいと思います。
Posted by: うさきち @ 10月14日2008年
This is good Internet marketing and public relations.
Posted by: christian louboutin @ 11月10日2011年
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