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蜂追いの男 ー 蜂研究家・富永朝和

12月8日2007年 カテゴリー: 国内, 自然, 食品

蜂追いの男 ー 蜂研究家・富永朝和

日本みつばちから取れる蜜は味がまったく違うそうだ。普段、日本人が、食パンに塗っているのは、西洋みつばちの蜜。日本ミツバチの蜜の味は、よりコクと深みがあり、一部の人たちの間で、料理の隠し味などに用いられているようだが、養蜂が難しいという。日本みつばちの蜜づくりに青春を捧げ、蜂のために人生のほとんどの時間を費やした男がいる。村人たちは、彼を「変わり者」として扱った。しかし、この人物、今では、村のシンボルにまでなっている。蜂を追いかける人生って、一体どんな一生?

取材:鈴木隆文



蜂への深い愛情の念を持つ富永氏

富永さんが、蜂に大きな興味を持ったのはいつのことですか?

オラが蜂の世界に入ったのは、小学校3年のとき。最初は、父に連れられて、蜂を追いかけに行ったの。そしたらね、それが楽しくてね、それで、どんどん、この世界に足を突っ込んでいってしまったの。当時はね、食べる物がなかったからね、みんな蜂追いをしていた時代だったの。蜂はタンパク源になる食料なの。でもね、蜂のなかでも、スズメバチは刺されると死んでしまうのね。だからね、みんな、命がけで蜂をつかまえた時代だったの。蜂をつかまえて食べてね、その味の、うめぇこと、うめぇこと。

蜂を追いつづける一生には苦難も多かったのではありませんか?

59年間もな、蜂人生を歩んでいるの。その間はね、もちろんね、蜂にさされるなんてことは当たり前にあるの。今じゃ、体内の抗体が強くなってしまっているから、朝に刺されても、夜には治ってしまっているけどね。中学生以後の人生では、蜂を研究するという意識が芽生え出してね。蜂は、研究しだすと、どんどんはまっていってしまってね。家族には、さんざ、叱られてね。「どうしてお前は、そうしていつも蜂のことばかししているんだ、仕事もせんと」って。お米買うお金もない時代だったからね。「蜂のことばかりをやって」と、そう言われるのも当たり前なの。でもね、そこで、止めなかったからね、今があるんね。


蜂の生態は奥が深い

たった一匹の女王蜂のために働く働き蜂

蜂とお話ができるようになったと聞いていますが?

一生を掛けて蜂の研究をしてきてね、42、3年目の頃にね、蜂と会話ができるようになったの。蜂との会話はね、手を動かしてするの。両手を使えばね、蜂が怒り出すのを止めることもできるの。蜂はね、喜怒哀楽がたくさんあるでな。ただ、蜂はどんなかわいがっていても、自分の顔のことは覚えてくれないけれど。でも、その代わり、大きな巣をつくらせたり、字を書かせたり、いろいろなことができるの。だから、今は、蜂に踊りを教えようと思っているの。全国的にも有名な「伊那のかんたろう節」を、何とか教え込めないかと思ってる。

蜂と話ができるということはにわかには信じられない話ですねー。

みんなそうなの。中川村の連中も、最初はぜんぜん、オラが蜂と会話できるということを言っても誰も信じてくれんでな、取り合ってくれんかったの。で、何とか、信じてもらわなきゃならねと思ってな、あるテレビ局に電話して取材に来てもらったの。それで、花子っていう蜂と会話している様子がテレビで放映されたんだ。そしたら、村の人たちがみんな、それを観てな。「朝ちゃん、本当に、会話できるだ、すごいな」って、みんな言うようになったの。

ハチ博物館にある蜂の死骸でつくった作品

富永さんが、養蜂する日本みつばちは、どんな蜂なんでしょう?

普段、日本人が口にしているのは、洋ばちの蜜なのね。西洋みつばちというのはね、人間に飼われないと生きていけない蜂ね。寒さに弱いの。世話をかけて養蜂してやって、はじめて生きていけるの。でもね、オラのやっている日本みつばちというのは、本当に強い蜂なの。寒さにも強いの。自立した蜂って言ったら良いんかね。全然、人間に飼われる必要がないの。むしろ、人間に世話を焼かれることなんて大嫌いなの。だから、知らない人がやると、逃げていっちゃうの。

でも、蜂は群れで生きていますよね?

女王蜂一匹の判断でね、数万匹の蜂を連れて逃げていってしまうの。女王蜂は、場所の環境が相応しいものかどうか、たった一日で見抜くから。その場所が、蜂の好みにあった気候かどうか。夏はどうか、冬はどうか。そういうことをね、たった一日で見抜くのね。だから、日本みちばちを飼う人は、蜂を飼う基礎を身につけないといけないのね。去年はうまくいったのに、今年は駄目だったなんて例はいくらでもあるの。


手の会話で蜂を導いてつくらせた巣

巨大な蜂の巣

女王蜂って、凄い能力があるのですねー。

女王蜂は、ひとつの巣に一匹しかいないの。たった一匹に多い群れだと、3万匹から5万匹の通い蜂が働いて蜜を集めるの。少ないのだと数千匹。通い蜂は、ぜんぶメスね。オスは交尾のために生まれてくるだけ。交尾すると死んでしまうから。女王蜂も、産卵能力がなくなってしまうと、巣を追い出されて、殺されてしまうの。巣には、普通たった一匹の女王蜂しかいないのだけどね、分蜂するときだけは別ね。分蜂は、蜂の巣が増えていくことをいうんだけど、このときのほんの一瞬だけは、女王蜂が2匹になるの。最初にいた女王蜂は、巣から先に出ていかないといけないのね。どうしてかと言うとね、年老いた女王蜂の方が産卵能力が低いからね。

ところで、この村にあるハチ博物館はどんな経緯で建てられたのでしょう?

新宿にある大きな百貨店で、信州物産展というのがあってね、そこで蜂の巣を展示しないかという話がきたの。それで、家に集めてあった巣を出品することにしたの。ほいだらな、それが、売れて売れてな。安いのでも3万円位から7万円位もするのが沢山出て、高いのだと70万円代ってのも売れてな、歩いている人はみんな止まって、巣を観ていくしな。ほいだら、村の方でも、何かできねぇかってことになってな。オラは、昔っから、蜂の博物館をやりたいって言っていたもんだからな。「じゃあ、蜂の博物館をつくろう」ってことになったんだ。


養蜂が難しい日本蜜蜂の蜜

村の文化施設には「朝ちゃん」の文字が至るところに踊る

そこから中川村は蜂の村になったわけですね?

今じゃ、村の特産品をつくるってなったら、「朝ちゃん五平」とか「朝ちゃんシャーベット」とか、何でもかんでも「朝ちゃん、朝ちゃん」。朝ちゃんって付ければいいと思ってんだから、困っちゃうよ。

最近では、たった一人でやられている富永さんが、大手企業とコラボレーションをしているそうですね。

養命酒っていうお酒あるでしょ。あれは、中川村から生まれた飲み物で、新しい工場が出来て、日本みつばちの蜂蜜を売りたいって言うんでね、今は一緒に仕事しているの。ほかにも、東京の有名な百貨店からも連絡が入ってきたりするのだけどね、採れる蜂蜜の量がぜんぜん追いつかなくてね。断らなきゃならない状態なの。

日本みつばちを養蜂していく動きも日本中で広がっているの。

今後は、どのような活動をお考えなのでしょうか?

今は信州日本みつばちの会というのをやっていてね。日本みつばちを養蜂していく動きも日本中で広がっているの。本当はね、蜜をどう採るかというってのは企業秘密にするようなもんなんだろうけどね、何年か前にオラ、大病をしてね。せっかく何十年もかけて、研究してきた成果がね、オラが死んでしまったら、どこにも残らないと困るでね。次にやる人も何十年もかけてやらなけれりゃならんでね。それじゃ、みんなのためにならんでね。それで、退院した後、これを広めるようにあっちこっち歩き回っているのね。


ハチ博物館(望岳荘内)
長野県上伊那郡中川村大草4489

富永朝和
1938年、中川村生まれ。蜂研究家

3 コメント

  1. 日本蜜蜂、西洋蜜蜂、台湾地蜂のプロポリス
    生産量はその生活環境によって異なると聞いて
    いますが、特に有名なブラジル産(アフリカーナ)と呼ばれる蜜蜂と比較してその生産量の違いはどうなんでしょうか?商業的に人が手を加えない状態においてその違いが知りたいのですが、
    教えていただけませんか?

    Posted by: 永山 辰郎 @ 3月16日2008年

  2. This is great post! Tnx for sharing.

    Posted by: Swing lyrics @ 5月20日2011年

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