
さり気ない、自分に合った帽子を探し出そうと思ったら、随分な時間が必要になりそうです。博多の地には、フリーランスの帽子デザイナーとして活躍する女性がいます。ブランド名は、Miki Matsuo。珍しい職業のフリーランサーである彼女が目指すの先にあるのは何でしょう?
取材:鈴木隆文
翻訳:クレア田中

元々は、ファッションデザイナーを目指されていたそうですね。
もともとは服飾をやっていました。専門の学校も卒業して、アパレルメーカーのパタンナーとして就職もして、働きました。帽子の道に進もうと思ったのは、服飾の世界が自分の性に合っていないと思ったからなんです。
どうして路線を変更されたのでしょうか?
ファッションデザイナーは、常に世の中の変化や流行に対して、アンテナを張っていなければならないですから。それに、服づくりではとても細かいことが要求されるんです。ミリ単位での細かさ、自分では自分のことを細かい性格だと思ってたけど、洋服づくりで求められる細かさというのは凄いんです。それで、なんで帽子かというと、どういうわけか何となく丁度いいと思ったのですね。全部、自分で決めて進められるし、細かさにおいても適度がありますからね。

帽子づくりの技術を学んだのは、日本ではないそうですね。
帽子の勉強は、フランスのパリでしました。フランスには、昔から憧れのようなものを抱いていて、いつか絶対に住んでみたいと思っていたんです。フランスに行ったのは22歳のとき。実際に住んでみた感想は、ひと言で言えば「楽しかった」ということになると思います。憧れていたから住めるだけで、そこの空気を吸えたら、幸せだという気持ちがあったんです。行く前は、特に何も用意していきませんでした。
エーッ、まったく用意していかなったのですか?
はい、まったく(笑)。最初、フランスには、帽子の学校が沢山あるように思っていたんですけど、全然そんなことはなくて、行ってみたらCMTという学校しかありませんでした(笑)。最初はフランス語も全然話せない状態ではじまって、語学学校に数ヶ月間通って、何となくは相手が言っていることもわかるようになりました。それからCMTに入学したんですね。

生地選びも帽子づくりの重要なポイント

フランスで学んだセンスが活かされているようだ
フランスの帽子の学校に通うって、なかなかできない体験ですよね。
入って驚いたのは、授業のペースが遅いということでした。一番作業が遅い人に合わせて、授業が進んでいくんですよ。私はもともと服飾の勉強もしていたし、パタンナーとしての経験もあったので、余計にそう感じたのかもしれません。でも、クラスにいた日本人はやはり手を動かすことにかけては早かったですね。やっぱり日本人は手先が器用なんだなとそのときわかりましたね。反対に、フランス人は、思いつくアイディアが面白かったですね。バラエティーに富んでいて、あと、色の使い方とか、綺麗でした。
滞仏で得たものは大きかったんでしょうね。
最後は、あちらで主催されていた帽子のコンクールに参加したんです。フランス各地から、100名以上は参加していたと思います。自分ではかなりの出来映えの自信作だったんですけど、優勝することはできませんでした。悔しかったですね。でも、終わった後に、いろいろな人たちが話かけてくれて、フランス語だったので定かではないのですけど、「うちで働かないか」というような誘いもありました。

独特なツバのデザインの帽子

さりげないけど珍しい装飾が施されているのが、Miki Matsuoの商品
帰国後、いきなりはフリーランスの帽子デザイナーで生計を立てるのは難しいですよね?
私も、最初、帽子ですぐに食べていくのは、難しいだろうなぁと思っていたんですよ。帰ってきてから、バイトなんかをしながら、帽子づくりをしなきゃならなくなるのかなぁと覚悟していました。ところが、帰ってきてすぐに、友達に誘われてフリーマーケットに帽子を出店してみたんです。もちろんフリーマーケットですから、まわりに並んでいるのは、数百円の品物ばかり。正直言うと、1万円以上もする自分の帽子なんか売れるはずはないと思っていました。ところが、驚いたことに帽子売れたんですよ。それも一個だけじゃなくて、何個も。4、5個は売れましたね。そこからですね、自信がついてしまったのは…。
じゃあ、そこからフリーランスの帽子デザイナーとしていきなり独立されたんですか?
それで展示会をやったりするようになって、自分の作品を発表すると、「こういう帽子つくって」とか言われたり、セレクトショップからも注文が来るようになったりしました。本当に運がよかったんだと思います。

頭に乗せるだけで印象が大きく変わる

シンプルでさりげないデザイン
量産品としての帽子には、興味はないのでしょうか?
やっぱり私には、大量生産で帽子をつくるという作業はできないと思っています。前に一度、帽子会社の社長さんからお話をもらって、「工場を自由に使っていいから、一部を工場でつくってやってみたら?」と言われたんですけど、どうしても頭を切り替えることができなくて、やっぱりできなかったですね。
オーダーメイドな受注のスタイルだと、いろいろ面倒も多いのでしょうか?
長いことやっていると、変わった注文もありますね。「頭の部分を全部メッシュにして、日焼けしたくないから後頭部にも日除けを付けて、顔も覆うようにしてほしい。でも、口の部分だけはときどき開けられるように開閉式にして欲しい」とか(笑)。何だか、まるで罰ゲームのような帽子だなぁとそのときは、思いましたね。でも、そんな自分の作風に合わない注文でも、うまく調和するように考えてつくるようにしています。ひとりでやっているいい点は、最初から最後まで作業に目が届くところだと思います。
オーダーメイドな受注のスタイルだと、いろいろ面倒も多いのでしょうか?
今は、いろいろと迷いもあるんですけど、「Miki Matsuo」というブランドを大きくしたいという野望もあります。 でも、今、こうして帽子づくりで食べていけるのは、本当に運が良かったというよりほかないですね。

ファッションショー用の帽子

服飾デザイナーを目指していた頃の経験が活きる
une plume
福岡市中央区大名1-2-28 2F

松尾美季
昭和51年、長崎県生まれ。帽子デザイナー

2 コメント
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