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新しい鋸ギリを開発する男 ー 帯鋸インサートチップ開発者・岩崎義弘

12月2日2007年 カテゴリー: ビジネス, プロジェクト, 国内, 製品

新しい鋸ギリを開発する男 ー 帯鋸インサートチップ開発者・岩崎義弘

目立師という職業があります。彼らの仕事は、鋸ギリの刃を目立てること。つまり、微調整をすることであります。岩崎目立加工所は、この目立ての世界を一変させようとしています。古い製材のあり方自体にメスを入れようとする男の目は、何を見ているのでしょうか。

取材:鈴木隆文
翻訳:クレア田中

岩崎目立加工所内の光景、帯鋸並べられた様子は圧巻

普段、多くの人は、木材を意識することはありませんね。

日本の生活に多く用いられている木材は、製材所の加工を経て、はじめて材料として使えるものになります。野山に生えている丸い原木を、人間の生活に合わせた四角い材料(角材)にするのだから、加工が必要なのは当然です。昔は、大工さんが「ちょうな」という道具を使って、丸を四角にしていました。製材は、それを機械化したものと考えれば良いかもしれません。普段、雨露をしのぐ家屋や家具の木材は、こうした製材所で整えられたものです。

岩崎さんの扱う帯鋸は、どんな道具なのでしょう?

この製材所で使われているのが帯鋸と呼ばれる、不思議な形をした道具です。これは、その名の通り帯状になった鋸ギリのことを指して言います。この見慣れない道具が日々、人々の生活を支える木材を挽くわけです。

様々な試行錯誤が繰り返され、進化を続けるインサートチップ

その帯鋸を扱う職人さんがいると聞きましたが、どんな仕事をする人なのでしょう?

これが取り付けられるのが、帯鋸盤と呼ばれる機器です。この巨大で危険な機械を取り扱うには、熟練のオペレーターが必要となります。このオペレーターのことをハラオシ(製材操作者)と言います。しかし、原木が木材へと変わるためには、もうひとりの作業員が必要となります。それが、精度を上げ、作業効率を上げるための職人、目立士です。以前は、目立「師」と呼ばれていたほど、熟達した腕と磨かれた目が必要な仕事でした。具体的に目立士がする仕事は、6〜7メートルの帯状の鋸ギリの調整です。歪みの調整、ヒートテンション調整(帯鋸をはずれにくくする)、腰入れ(保ちをよくする)、刃の掃除、アサリづくり(耳かきのような刃先づくり)、焼き戻し(刃の柔軟性、耐久性を高める)、研磨とその作業は非常に繊細なものです。その作業が繊細であるがゆえに、職人の熟練した技術、そして1本につき4時間にも及ぶ調整作業が必要になります。

目立士というのは、なかなか興味深い仕事なのですね。

まぁ、興味深い仕事ではあるとは思います。目立士は帯鋸盤の機械の個性とハラオシ(製材操作者)の個性とを考え合わせながら、帯鋸の調整をします。そのような事情から、帯鋸自体も業者の用途に合わせて製造される必要があります。つまり、世界中で、パッケージ化された帯鋸は販売されていないのです。金属切削の世界では、既にこういう非合理的な製造スタイルはなくなっているのですが、どうしたわけか木材加工(製材)の分野においては、このスタイルが慣習的に残ってしまっています。

帯鋸盤。この機械によって丸太から製材された木材が生まれる

現在のやり方のどのような点が問題でしょうか?

ベースとなる機械と刃がが独立して進化していけないのです。ですから、この世界には腕に覚えありの、我こそは日本一という職人さんが大勢います。僕の父親もそのうちのひとりで、目立の世界では、いわゆる名人と目される職人でした。でも、少しきつい例えをしたならば、目立の作業で行われていることは、一度、折れてしまった刀を再び熱でくっつけて元に戻しているような乱暴なことでもあります。つまり、技術革新からは、すっかり取り残されてしまっているわけです。

そこへきて、岩崎さんが開発している帯鋸インサートチップはどのようなものなのでしょうか?

僕が発案したのは、帯鋸の先端に付け替えるためのチップです。従来は、帯鋸の先にコバルトの合金を溶接し研磨、調整をしなければならなかったのですが、このチップではそれが必要なくなるわけです。製材機から取り外す必要もなく、削減できる労力は非常に大きなものです。安来鋼を用いてつくられた刃の切削力は従来のものの2倍程度はあるはずです。


岩崎氏発案のインサートチップ

帯鋸に取り付けられるインサートチップ

土台となる帯鋸

インサートチップが取り付けられるとこうなる

岩崎さんは、開発者でありながら、社長でもあります。採算性という点からは帯鋸開発をどのように考えていますか?

現在、日本の製材所では、一日に60万個の刃が必要です。この数は、もの凄い大きな潜在的なマーケットがあることを示唆しています。しかし、問題は、これをコスト的にも採算の合うしっかりとしたビジネスの仕組みに乗せることなのです。今は、この一点に注力していると言っても過言ではないかもしれません。市場が大きいということは、市場を変えるのも簡単ではないということですからね。今は、低いコストで切れ味良いチップをどう生産していくのかに、頭を悩ましています。この技術も、この鋼種の入手も、とても難度の高いもので、とても簡単にできるものではありません。最初はこれまでにない製品をつくろうとしていましたが、とある大学の先生の「革新的な商品をつくりたいなら、今を見ろ」というアドバイスをもらってからは、現状の技術は改良と自然淘汰の結果の最良の状態であるということを知りました。世界的にも注目を集める技術です。何とか、より良い技術に持っていけたらということを常に願っています。

話が前後しますが、そもそも岩崎さんが目立ての世界に入るきっかけは何だったのでしょう?

父が目立て師だったのです。しかし、僕が目立てになろうと決心したときには、父との間に30年の差がありました。つまり一生、師匠である父には、技において敵うわけがない。それに父は、採算性のない仕事も引き受けていて、商いとしては発展の方向には向いていなかったのです。そこで、僕は違うやり方をする必要がありました。そして、僕が父に伝えたのが辞職勧告、つまり辞めてほしいといったのです。目立士として、父の腕が確かなのは知っていました。しかし、時代は変わります。そして、父はやはり超えていかなければなりませんから。それでも思うのは、父はさすがに名人と言われるだけあって、鋸と製材のことをよく知っているんですよね。今でも、私はことある毎に父には相談をしていますよ。やはり父の時代の「体験」というものは、時代が変わっても活かされていくものだと思いますからね。

岩崎目立加工所
島根県大田市大田町大田ロ204-12

岩崎義弘
昭和36年生まれ。有限会社岩崎目立加工所代表取締役社長。

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2 コメント

  1. [帯鋸盤。この機械によって丸太から製材された木材が生まれる]
    の写真が違うと思います。

    Posted by: ryusuke @ 12月13日2008年

  2. I enjoyed studying this post. I am completely satisfied to search out this put up as a result of I’m interested within the topic.

    Posted by: christian louboutin @ 11月10日2011年

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